下着をはいたダビデ像は何を思うか
「公園のダビデ象やヴィーナス像に下着を着せて、と町民から苦情が出てる」というニュースが最近話題によく上がってきます。
参考URL:
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130205-OYT1T00029.htm
美術に携わる身としては、「彫刻に下着着せたらそっちのほうがなんかエロくてやばくないか」とか「公園で彫刻が見られる(無料一般公開状態)てのは(まぁ雨の心配とかもあるが)いいことだと思うんだがなぁ」とか、まぁいろいろと思うところはあるのですが、一番感じたのは「美術彫刻も美術館を出てしまえばただの石か、レディメイドの逆だな」ということで、何だか笑ってしまったのです。


レディメイドという言葉は「既製品」という意味で広く知られていると思いますが、美術史においては1915年にマルセル・デュシャンという作家が自らのオブジェ作品につけた名としても登場し、今ではオブジェの1ジャンルに相当するようです。
どういう表現かというと「実用のために大量生産された既製品を、当初の目的とは違う使いかたをして、別の意味を持たせる」ということ、つまり「既製品を美術作品として展示(表現)する」ということです。
デュシャンの最も有名な作品のひとつに「泉」というものがありますが、これは男子用小便器に署名をし、それに題名をつけて作品としたものです。
この作品は良くも悪くも物議をかもし、美術館へ出品されたものの、実際に展示されることはなかったようです。
参考URL:
http://ja.wikipedia.org/wiki/レディ・メイド
http://www.weblio.jp/content/レディ・メイド
http://ja.wikipedia.org/wiki/マルセル・デュシャン

つまるところ「例え日用品であっても、美術館に展示されれば美術品として見なされる(可能性がある)」ということです。
傘であっても、鍋であっても、美術館に展示されれば美術品となりうるのです。
「これを美術と認めていいのか?」という議論は当時もおおいにされていましたが、現代においてもそれは同じで、私の周りにはどちらかというと「あれは美術とは認めん」派が多いです。
個人的には、賛否云々ではなく単に「おもしろい考えかただなぁ」と思うのですがね。
まぁ話すと長くなりますので、今日はさくっと割愛しましょう。


さて、ニュースの話に戻りますが、これはまさしくレディメイドの逆なのです。
「例え彫刻であっても、美術館の外に出れば美術品としては見なされない(可能性がある)」
例えば親御さんがお子さんを連れて美術館を訪れ、ダビデ象やヴィーナス像を見たとしてもあんな苦情は出ないでしょう。
ところが、公園や街中となると話は違うのです。
苦情を入れた人には(あれが美術品であるにもかかわらず)美術品とは見なさなかったわけです。
一方、町としては「本物の芸術品が公園にふたつもあるなんて素晴らしいじゃないか、美術教育にも役立つ」としており、議論は平行線のようです。


これがギリシャ彫刻ではなく、例えば幾何学的な形のオブジェであるとか、そういったものならこういう苦情もなかった(あるいはまだ少なかった)だろうなぁ。
これがダビデじゃなくラオコーンとかだったらもっと苦情が入ったのかもしれないなぁ。

……と、ひとりで思わず笑っていました。
どうやら、世間の認識としては美術にもTPOがあるようですね。
私としては「何が美術で、何が美術じゃないか、それは個々人の判断に委ねればよろしいと思う」派なので、どちらが良いとか悪いとかという議論に参加することなく、今回のことをただただ自問自答するための題材として眺めていようと思います。


しかし、例えレプリカだとしてもダビデ像やヴィーナス像がタダで見られるなんてうらやましい限りだ。
……とだけ、ひとつだけ欲を吐き出しておきます。
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