20分ライティング #36
「今年は気になる人多いなぁ」

出演者一覧を眺めながらコウヤが呟く。
我が家は今年も紅白を流しながら年越しそばを食べる暮れとなりそうだ。

「ところで、今日のお夜食は何ですか?」
「出汁巻きの予定。燗する?」
「する! 燗して!」

もう夜食の話である。
まぁそばだけで夜更けまでは持つまい。

「今年もだらだら年越す感じで」
「ん、賛成」
「除夜の鐘聞きながら寝よか」
「そんな感じで」
「年の瀬ぐらいだらだら参りましょう」
「まぁ年中だらだらしてますが」

掃除も終わり、おせちの用意も終わり、二人で溶けるようにだらける年の瀬。
静かに一年を締め括る。

「テンション次第で、金爆とももクロちゃんとぱみゅのとき踊るかもしれん」

撤回。
今年は少し賑やかかもしれない。

「来年はどうなるかなぁ?」
「どうやろなぁ」
「だらっと生きたいなぁ」
「せやね」

我々は、これぐらいの歩幅が丁度いい。
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20分ライティング #35
コウヤの機嫌が朝から悪い。
布団の中でがうがうと言いながらばたばたしている。

「おとなしく寝とれ、お前は」
「ううううううがあああああああ!」

世の中はクリスマス一色で華やかなのだろうが、昨日からの熱が下がらずに安静を強制されたコウヤには何とも世知辛い心地なのだろう。
しかし、暴れていては体力を消耗する一方である。

「鶏とケーキ買うてきたるから、じっと寝とれ」
「うぎゅうううううううううう……」
「ケーキ何がええ? 二人やし、ホールじゃなくてもええやろ」
「……苺乗ったやつ」
「苺やな、クリーム何でもええか?」
「あと、プリン……」
「プリンな」
「モリナガの焼きプリンな!」
「はいはい」

よっこらしょと立ち上がり、枕元から移動しようとすると、何かがズボンの裾を掴んだ。
コウヤの手である。
熱が出ていても、指先は冷え切っている。

「今日ごめんな……」
「しゃーないやん」
「ぐすん……」
「元気になったらデート行こ。な」
「……うん」

脚から手が離れて、大人しくなる。
帰ってくる頃には少しでも元気が戻っていますように。
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20分ライティング #34
服を買いたいのでついてきて、と双子から依頼を受けて、電車を乗り継ぎ、三人でショッピングモールへ来た。
クリスマスが近いからか、リースやイルミネーションの飾りが多く見られる。

「で、お二人は今日なに買うのん?」
「毛糸パンツ」

どうやら目的は同じらしい。
二人揃って女性用下着コーナーに向かうのを、後ろから追いかける。

「どれにしようかなぁ?」
「おれは無地のにしようっと」
「ショウゴ、この白にしようかなぁ」
「でも黒のほうがあったかそうじゃない?」
「あ、そっかー。そっちのほうがいいかなぁ?」
「白と黒なら黒のほうがあったかいけど、茶色も暖色でおすすめでっせ」
「うーん、でもこの茶色あんまり好きじゃないなぁ……」

口を挟みつつ、あれこれ呟きながら選んでいるのを後ろから眺める。
迷っていたショウゴもひとつに絞れたようだ。

「あとは、レッグウォーマーも買おうかなぁ」
「ほぅ、防寒対策ばっちしやないか」
「なんか今年すごく寒いもん。それに、躯冷やすと男性ホルモン出やすくなるってツイッターで見かけて」

そういやそんなポストを見かけたな、とぼんやり思い出す。

「おれもなんか最近躯冷えるんだよなぁ。でもレッグウォーマーってあったかいのかな?」
「あれはまじあったかい」
「え、おにぃもしてるの?」
「おれ去年から導入してるけど、もっとはよぉに導入しとけばよかったと思った、あれは」
「マジか、すげー」

レッグウォーマーを買う気になったのか、二人は続いて物色を再開する。
ついでなので、腹巻きも勧めておこうか。
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20分ライティング #33
「冬至の七草とは「ん」がふたつ付く七種類の食べ物を指し、運を呼び込めると言われています……ほうほう、なるほど」

親父とミナリさんのお店へ食事に出かけたら、今日は冬至ということで冬至懐石なる特別メニューができていた。
この人のイベント好き、そして企画をすぐ実行に移す身軽さは、見習わねばなといつも思う。

「んで、今回は冬至の七草を満喫できるコースになってるのね」
「そうえ。柚子も付くからお得やで」
「あいかわらず商売うまいな、姉さんは」

笑いながら、もぐもぐと煮物を頬張る。
南京も蓮根も人参もたくさん入っていて、野菜好きにはたまらない逸品である。

「うちかてお客さんとの日々の会話からちゃーんと勉強してるんえ」

そう言って、ミナリさんはえっへんと胸を張る。

「前に『こんなに喰われへんわー』って言うたお客さんがおりはって、コースより量少なめの定食メニュー作ったら、それがえらい好評でなぁ」
「わしもそんな喰われへんときあるから、少なめメニューあると助かるよ」
「お昼ごはんに食べに来たいわぁって言うてもろたり。量少ないって意外と需要あるんねぇ」

安くてたっぷり喰えるのが一番良さそうではあるが、喰いきれないよりは足りないほうが、個人的には良い。
少食にはありがたいメニューである。

「お昼はやりはらへんのですか?」
「お昼は仕込みとかあるしねぇ。たまにはええけど」
「あーなるほどな」
「はい、デザートどす」
「おおおおおおお、なんかすごいの来たこれ!」

こうして、今日も夜が更けていく。
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20分ライティング #032
「うーん……まだ発芽せんなぁ……」

今年こそ行きたい、と以前から計画していた旅行が実現となりつつある。
が、今月に入ってから、コウヤはPCに向かって唸るという日々が続いていた。

「どう?」
「まだあかーん……」

早い話が、旅の目的が一向に姿を見せないのである。
残暑が厳しく、蝉がいまだ現役である状態で、開花が遅れるかもしれないとのことであった。

「ホテルいつ取ったらええねんよー!?」
「まぁーこればっかりはしゃあないからなぁ」
「うあああああああああああ残暑爆発しろおおおおおおおお!」

PCに向かって吠える。
が、残念ながら、吠えたところで気温は下がらない。

「十月の頭になるかなぁ……」
「まぁええやないか、都合つけれるんやし」
「そよなぁ、これ暑さで発芽せんかったとかにならんといいけど……」

ふたりで宿泊つきで遠出するのも久々である。
なんとか顔を出してほしいものである。
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